前回、これまでをふりかえったこともあり、一段落した気分で少し間があいてしまいました。まだまだご紹介したい絵本はありますので、これからも、のんびりペースでお届けします。
今回はフランスのイラストレーター、マルティーヌ・ペラン(Martine Perrin)さんによる、デザイン性の高い『Méli-mélo(めりめろ)』のシリーズをご紹介します。
最初の一冊は『ジャングルでだあれ』です。
原書は、2003年にフランスのMilan社から発売された『Méli-mélo』。それを邦訳したのが、絵本作家で、言葉遊びの絵本もたくさん手がけている石津ちひろさん。訳書は2007年に発売されました。
フランス語の原題「Méli-mélo」は「寄せ集め」と直訳されるようですが、本書の場合は「いろいろ」といった感じでしょうか。日本語版では「ごちゃまぜ」と解説されています。イタリア語版では「Gira e Rigira」、スペイン語版では「Mira-mira」、カタラン語では「Poti-poti」と変化していくのも興味深いですね。
画像だけではわかりにくいですが、動物の形に切り抜かれた窓と、その下から見える模様とが、四ページ連続でセットになっています。
最初の見開きには「シマウマさん シマウマさん いったい なにを みつけたの?」。シマウマ型の穴が開いたページをめくると「おいしそうな くさで できてる やね!」と、さきほどシマウマの模様に見えていたものが、草でできた屋根のある家として現れます。さらに、シマウマの穴は前のページの模様と重なり、動きを感じさせる動物の姿が現れます。
キリンの網目が服の模様になったり、ヒヒの毛並みが木の皮になったりして、合計で八種類の動物とその変化が楽しめます。明確なストーリーはないのですが、ジャングルの動物と、そこに生活する人たちの様子が巧みに描かれています。
その後、同様の仕掛けをもつ「Méli-mélo」シリーズとして、2004年に『Méli-mélo à la ferme』と『Méli-mélo en Chine』、2005年に『Méli-mélo chez les indiens』、2007年に『Méli-mélo au pays des kangourous』がフランスで発売されています。
日本では、最後の一冊を除き、それぞれ『まきばでだあれ』『おしろでだあれ』『さばくでだあれ』という邦題で2007年に発売されています。
他のシリーズを簡単にご紹介すると、農場を舞台にひつじ・きつね・にわとりなどが登場する『まきばでだあれ』、中国を舞台にりゅう・とら・さるなどが登場する『おしろでだあれ』、砂漠を舞台にビーバー・わし・へびなどが登場する『さばくでだあれ』となります。
本の仕掛け自体は『ジャングルでだあれ』と同様ですが、石津ちひろさんの軽やかな訳文と、マルティーヌ・ペランさんの個性的な絵が様々な舞台で楽しめます。カンガルーの登場する最後の一冊も、邦訳の発表が待たれますね。
今回はここまで。次回をお楽しみに。