- 山田
- 結局、手に取って、少なくとも遊んでもらえる機会を、ひたすら設ける。それが一つの、裾野の限界かな。
- 岩原
- パッと見で、遊べそうと思わせてしまうような。
- 山田
- ただ、遊べそうと思っても、手に取れないとね。そこらへん、ネット販売は難しいと思うんですけど。 パズルっていうものは。
- えぢ
- 難しいとは思う。ここはこうやって遊べる場にしているけどね。
- 山田
- そういう意味で、パズルを事業化するときに、イベントというのは入れたかったんですよね。
- えぢ
- なるほど。
- 山田
- とにかく広め続けないと、自分たちが扱っている製品は伝わらないという思いがあって。からくり(創作研究会)も必ず両輪でやってるし、パズラボも遊ぶ場を常に提供する形でネット販売してる。傍から見てると、それがいいのかなと思いますね。
- 岩原
- それと、今は小ロット生産もしやすくなってますし。
- えぢ
- こういうもの(3Dプリンター)を使えばね。今これやっている人は少ないけど、どんどん増えてくれば、ライバルも増えてくる。
- 岩原
- 金型を作らなくても、データさえ作れれば新しいものが作れるとなると、多品種つくっていく中で、その一部が量産品に移っていくことになりますよね。
- 山田
- ただ、そこでネックになってくるのが、さらにロットを上げようとすると、企業なりに売り込んでいくステップがある。そこで、かなり時間を割かないといけない。
- えぢ
- まぁ、そうだね。
- 岩原
- でも、売り込みのときに形ができあがっていれば、それで遊べるし、説得力もある。
- 山田
- それは強いですよね。
- 岩原
- 単価で言えば、金型でつくるよりコストは上がっているのかもしれないけど、それは必要なぶんだけ乗せるよりしょうがないですよ。
- 山田
- そこを、うまいことつなげていければ、いいなぁと。
- 岩原
- 今の値段だと、何万個でなくても、もっと少ない数で成り立つようにさえできれば続けていける、ということなんじゃないですかね。
- 山田
- ぼくら、ASOBIDEAが生きていく道は、そこらへんなのかな。ネタを拾い出して、ユーザーまでつなげる。それはなるべく小ロットでなく、ある程度いいものを広める手伝いをして、お金をいただくと。
- 岩原
- どっちですかね。(試作品を手に持って)ここまで持っていく段階と、ここから量産に持っていくという、二段階あるのかもしれない。
- 山田
- その二段階は、もちろん同じ人がやってもいいと思うんですけど、周りのデザイナーを見てて、そこまで全部まわせる人っていうのは、いないんですよね。
おもちゃ会社の側から頑張って手を伸ばしてきてくれて、拾い上げて作ってくれる場合はあるし、ぼくもそうだった。ただ、それは稀なケースなんで、逆にこっちから手を伸ばして結びつける場ができれば、そのステップがトントン流れるのかなと。 - えぢ
- なるほど。
- 山田
- たぶん、メーカーの人たちも面白いデザインを常に求めてるんですけど、自分たちの持つチャンネルに限界があって、調べ切れないですよね。それをつなぐ人が、ちょっとでもいれば。
- 岩原
- うん。
- 山田
- あそこに聞けば何か面白いネタがある、という立場にまでなれば、ぼくの夢はちょっと近づくかな。
- 岩原
- たくさん拾い上げて、出すと。本当の量産よりは高い値段になるのかもしれないけど、それはしょうがない?
- 山田
- それは、いいと思うんですよね。とにかく、価値ある質のものがここにあれば流せるし、それぞれの人がそれなりに生きていくだけのお金は出せると思う。
- 岩原
- 木製品の場合は、むしろ付けるために良い木を使ってみたり、寄木がそうですけど、模様を付けてみたりします。なくてもパズルは成り立つわけですけれども、細工を多くしたり、いろんなことをしてみるわけですよね。
- 山田
- うん。
- 岩原
- ただ、パズルのギミックだけでシンプルなものにすると、逆にプラスチックは難しいのかな。
- 山田
- 高級プラスチックで作りました、とは言えないですからね(笑)。まぁ、できて金属にするくらいですか。
- えぢ
- 材質はね。けど、最近は3Dプリンターに「ウッディライク」というのがあって。
- 山田
- はいはい、木の粉みたいな。
- えぢ
- まだ実物は見ていないけど、MDFみたいなものかと。で、どんどん質感が上がってくると、からくりも危ういよ(笑)。きちんと木目が再現されたりしたら……。
- 山田
- (笑)
- 岩原
- まぁ、家具なんかいっぱいありますからね。
- えぢ
- 表面のプリントではね。
- 岩原
- 色もきれいだし、木目や導管(木の水分が通るところ)まで出てるし、重さも近い状態で合わせてあるとか。ちょっとキズがついて初めてプリントに気付いたとか、ありますからね。
2014.5.6
(つづく)