第8回 有名な「だまし絵」を元ネタにした広告

まずは、この広告ポスターをごらんいただきましょう。さて、このビジュアルにピンと来る人は、一般的にどのくらいいるのでしょうか。

これの元ネタは有名な「だまし絵」です。下の画像がそれでして、やや顔を向こうに向けている若い女性に見えたり、鼻の大きな老女に見えたりする「多義イラスト」です。

で、最初の広告は、この絵を部分的に修正して、老女に見える部分(あご)を黒く塗りつぶしているんですね。広告商品は「老化防止クリーム(anti aging cream)」。老女にはなりませんよ、というメッセージなわけです。なかなかの考え落ちですが、分かる人はどのくらいいるのかなあ。

次も、よく知られた「だまし絵」をもじった広告。これを元ネタと並べてみます。

鏡をのぞく女性が、全体ではドクロに見えるというもの。広告商品は香水「ポワゾン」で、ちょっと危険な香りをドクロのイメージにだぶらせたのでしょう。実写にしたところが、いい感じです。

でも、元のだまし絵は、「すべては虚飾(All Is Vanity)」という題名でして、これは粧うこと自体が虚しいというのがテーマ。なんだか皮肉ではありますね。

さて、最後にもう一つ。これもパロディにできるぐらい有名なのかしらんと、つい思った作品です。

なんのロゴも文字もない広告ですが、よく見ると、絵を形作っているのは錠剤。広告商品はバイアグラです。元ネタは「男の心の中にあるものは(What's On A Man's Mind)」という、ややエロチックな「だまし絵」でした。

ま、説明不要ですよね。ちなみに、だまし絵の右下にある名前はジークムント・フロイト(Sigmund Freud)。このだまし絵は、フロイトの精神分析学を皮肉って、彼の似顔絵と女性のヌードを組み合わせたものなのでした。