第7回 映画やドラマを錯視デザインで表現する

前回の最後に、「錯視応用の映画ポスターを、さらに紹介します」と言いましたので、ちょっと二つほど並べてみましょう。

どちらもシンプルな絵柄の中に、2つの要素を取り込んでいる「錯視デザイン」ですね。錯視をつかった映画ポスターは、このタイプの作例が多いです。

で、ふと思ったのが、これと似たものをさらに続けて紹介しても、見る方は「ああ、またこれね」と思ってしまうだろうなと。それではつまらない。

ということで、ここからは、ちょっと毛色の違うポスターを探して選んでみました。まずは、ぱっと見た瞬間「何だろう?」と思わされるデザイン。

よく見ると、先の二つのポスターと同じ「図地反転」の手法だとわかります。でも、ちょっとわかりにくい。そこが面白いと思いました。これは「TRUE BLOOD(トゥルーブラッド)」という吸血鬼ドラマの第2シーズン開始を告げるポスターです。

次もホラー系映画のポスターなのですが、さらに分かりにくい。さて、どんな錯視なんでしょうか?

答えを書く前に、映画の内容を紹介しておきましょう。

原題は「Let Me In」という、2010年公開のホラー・恋愛映画(日本では「モールス」という題名で公開)。雪に閉ざされた田舎町に住む少年が、ある日隣家に引っ越してきた少女に惹かれ仲良くなっていく様子と、その町でおきる連続猟奇殺人の謎が描かれていき……というストーリーです。

で、ポスターに話を戻すと、中央の少女の寝姿が、何となく「左を向いている横顔」に見えてきませんか。少女の足が鼻筋で、その下に口らしき形があり、少女の頭が顎のラインになっています。やっぱり、分かりにくいかな。

映画の結末を暗示的に表したくて、やや難易度を高くしたのではないかなあ~というのが、私の好意的な(?)憶測ではあります。

ま、錯視のしかけが、すぐに分かってはつまらない。でも、分かりにくくては伝わらない。その当たりのさじ加減が、錯視デザインを作るときの難しさであり、面白さなんだと思いました。