「埖」という漢字があります。これで「ゴミ」と読みますが、なぜ「土」偏に「花」でゴミなのか?
花が土に還る様子がゴミに見えたからでしょうか? 土ボコリが花のように舞っている様子が、ゴミのようで汚いからでしょうか?
はたして、真実はどうなのでしょう?
インターネットで調べてみるも、いまいち成果が無かったので、図書館に行きました。
真っ先に目についた『漢字百科大辞典』なる辞書。『広辞苑』や『大辞林』級に分厚い、日本最大の漢字百科辞典なのに、「埖」の読みは載っていませんでした。
そのかわり「国字の語源」という章を発見! この際、「埖」の源流を知ることができれば、読みなんて載ってなくてもいい!との思いで調べましたが、載っておらず……。
『漢字百科大辞典』は諦め、ちょっとでも漢字にかかわっていると思われる辞典をくまなく探すも、全く成果なし。
さて、どうしよう?
とりあえず、ネットで得ていた『国字の字典』(東京堂出版)という本に「埖」の読みが載っているとのことなので、古本屋で入手しました。
そこには、読みと一緒に「埖」ができた説明が書かれていて、
[地名]青森県三戸郡福地村字埖渡(ごみわたり)
一説によれば、「渡し」を渡るときに、当初は挨拶して渡ったことから、挨渡(あいわたし)と読んでいたものを、その後、「挨」が「埃」となり、それが今の「埖」になったというが、はっきりしたことは分らない。(福地村役場・総務課)
とのこと。ここで分かったことは、
- 「埖」という漢字は単体で使用されるものではなく、地名の一部でしか使われていないこと。
- 挨渡(あいわたし)の「挨」が、挨 → 埃 → 埖 と変化して、埖渡(ごみわたり)になったということ。
さあ、ツッコミます。
挨 → 埃 の変化は似ているから分かるけど、埃 → 埖 の変化は少々苦しいでしょ。それに、「ゴミ」という読みはどこからでてきた?
と思ったら、「埃」には「ゴミ」という読みもあるようです。なるほど、埃 → 埖 の変化で「ゴミ」の読みが引き継がれたんですね。
そうすると、後は 埃 → 埖 という形の変化の問題だけ。
あれこれ考えているうちに、ひらめきました。この漢字たちを草書体で書いてみると、こうなります。
もちろん、これはパソコンに入っている見本なので、あまり似ていないかもしれませんが、昔の人が「埃」の右側をさらに崩して書いたら「花」と勘違いされて、「埖」という漢字ができた、という感じではないでしょうか?
特に、赤枠の部分。「埃」の右側を崩して書くと、「埖」に見間違えられそうに思うのですが……。
以上、私がたどり着いた説でした。