その2 量産と手作業

山田
「多層球」みたいなものも作れるんですよね?
えぢ
できます。こういうチェーン状のものも、まるごとデータを作って、ひとかたまりで作れちゃう。
山田
強度はどうなんですかね。そこらへんの感覚がわからないんですけど。
えぢ
そうだねぇ、強度はプリンターの種類にもよる。
岩原
「多層球」って何ですか?
山田
ボールが、こうあって、こうあって、こう入ってる。(ジェスチャーをして見せる)
えぢ
ボールの中にボールがあって、その中にボールがあって、みたいなもの。
岩原
技術的にはできるのでしょうね。
山田
結局、あれなんですよね。「不可能物体」が不可能でなくなってきている(笑)。
えぢ
うん。不可能物体が作れてしまう。
岩原
今までできなかったことができていくとするなら、なかなか可能性がありますよね。
えぢ
もちろん、さっき言われたようにコストとか、まだまだ問題はある。だけど、なかなか面白い世界というか、今後たのしみな世界という感じ。パズルというより、3Dプリンター面白いなっていう感覚が最近あって、これからパズル以外のものも作っていくかもしれない。
岩原
(3Dプリンター作品を触って)あぁ、けっこう強度あるなぁ。これだけ強ければ、普通に遊ぶのには何の問題もない。
山田
たしかに。
岩原
まぁ、木の世界は、プログラムで機械が自動的に動いてくれるものが導入されているけど、全部はやってくれないので(笑)。
山田
そりゃそうだ。
岩原
かなり限定されたものとして、パズル的なものはある程度つくれるんだけど、材料集めから、材料の乾燥から、結局は手作業の部分が多いです。機械は使うけれども、ただ刃物が回っているだけで何もしてくれないから、手作業は当分なくならないだろうなぁ。
山田
まぁ、それだけ木は個性があるってことでしょ。
岩原
勝手に動いちゃうし、乾かすのに時間かかるし、材料を入手するのもね。でも逆に、木の良さを生かそうという考え方もあって。
えぢ
それが強みでもある。
岩原
まぁ、質感は木と違いますけど、パズルの理論部分を楽しむとなると、3Dプリンターで十分に楽しめちゃう。しかも、作るのが便利となれば、そっちの方が良くなっちゃうと思うんですけどね。
山田
たしかに、製品だけで捉えると、日本とヨーロッパは木のものが結構ありますよね。けど、アメリカに行くと、基本はプラというか、木以外のものがパズルとしては多い気がするな。これも、文化なんでしょうけどね。
岩原
で、これ何ですか。(テーブルに置いてあるキーホルダーを手に取って)ナナメにいくのかな?
山田
こういうのを木で作れます? 作れるといえば作れるのか。死ぬ気でやれば(笑)。
岩原
いや、これは厳しいなぁ(笑)。
えぢ
普通のダブテイル(継ぎ手)というか、単純な形なら作れるけど、3Dプリンターなら、こういう複雑な形もできるわけ。
岩原
いいよなぁ、すごいおしゃれで。たぶん、無理なく作れるんですよね。これ、パズラボの企画ですか?
えぢ
そう。
岩原
木では無理かなぁ。彫るのが上手い人が、一品制作として作るみたいな(笑)。
山田
それは完全に芸術の世界ですよ(笑)。
岩原
でも、量産なんてできない。
えぢ
こっちは、もっと不思議な感じがしませんか。(と言って、別のものを出してくる)
ほら、こいつらを一つにまとめたような。
岩原
玄人むけの変り種だ。
山田
(写真を撮るスタッフに向かって)これ、写真とるのに360度のカメラがいるよ。片面ずつ撮ったって、不思議じゃないからね(笑)。
岩原
つながってるデータとか、難しくないですか? この、違う形をつなげるためのデータづくり。
えぢ
あぁ、そういうのはCADソフトの機能で「こういう形からこういう形へ連続的に」ってやると、そこは自動計算だから、CADまかせ。
山田
ちょっと話は変わるけど、こういうものを見ると、どこかに売り込んで量産させられないか、って思わんでもない。最終的に商売としてやっていくには、そういうのも面白いのかなと。
えぢ
そうねぇ。
岩原
これ、いくらくらいですか?
えぢ
今うちで1200円で売ってるんだけど、値段は微妙かもしれないね。
山田
まぁ商売として、このくらいのロットでは、このぐらいの値段で売らないといけないんでしょう。
岩原
どうなんだろうな。これ、金型つくってやったら、よほど作らないといけない?
山田
たぶん、一万くらいの数で作れば、500円とか、そのくらいの値段まで落とせるとは思う。
えぢ
まぁ、一万個を売るだけの販路があるかどうか。そこを開拓していかないとね。
山田
そうなんですよね。作るっていうのは、モノを作るのとまた別じゃないですか。
えぢ
うん。
山田
ぼくなんか、パズルを自分でデザインしてて、前に芦ヶ原(伸之)さんに言われたことがあって、パズルを商売にしたかったら、自分で作るなと。
ある意味、あの人の発想だと思うんですけど、自分で作っていると作る時間を取られるし、その労力のわりに、けっこう大変。なるべく色んなものを出すには、メーカーに作ってもらう。
岩原
あぁ。
山田
そのときは何も考えてなかったけど、印象には残ってて、じゃあ何をするかって言うと、要はデザインと企画まで。自分がパズルでなんとか食っていこうと思うなら、そこらへんをしなきゃいけないなと。
岩原
うん。
山田
デザイナーはそれぞれ良いアイディアを持ってますよね。だけど、みんなそれぞれ技術を持って、こういう形まで上げて来れるのに、もうひと伸びないな、っていう感覚があるんです。
岩原
なんか、商売になりそうな気はするんですよね。こうやって見ると。
山田
ねぇ。
きっちり宣伝かけて売り込めば、えぢさんが工作しなくても良いぐらいまで抜けられるんじゃないかなって。
えぢ
うん。
(つづく)

えぢ ナガタ
2000年に「Pencil Case」でパズル作家としてデビューし、2008年より「パズラボ」をオープン。パズルを軸に多面的に活動中。

岩原 宏志
からくり箱の職人として、1999年より「からくり創作研究会」で活動中。独自の作風は国内のみならず海外でも評価されている。