- 山田
- もっと極端な話、これは形になってますけど、あの「からくりパズルアイデアコンテスト」っていうのは、アイデアだけを送ってくれるじゃないですか。
- 岩原
- ええ。
- 山田
- つまり、形にするのは他人という。
これって、面白い形だなぁと思ってて、たぶん、どんな世界でもありえる。 - えぢ
- ものを作る技術がない人でも、アイデアだけっていう人、まぁ、いっぱいいるよね。
- 岩原
- 子供たちも含めて参加できる、っていう。
- 山田
- そうですね。比較的それを具現化したのが、あの形なのかな。
- 岩原
- うん。
- 山田
- あれは、「からくり」というアウトプットでしょ。あそこまで一般的でなくても、こんな動きが面白いんじゃない?というアイデアだけはあって、本人はそれ以上何もないことがある。
それで、パズルを作ってきた人が、それ面白いアイデアだね、といって形にする。そんなつながりを作る場が設定できれば、もっと面白いな。 - 岩原
- 本格的なギミックを持ったパズルって、マイナスの面としては、最初から子供たちを排除しちゃうところもあって。こう開いたら楽しいなって、もっと気楽に 子供の方から接近できるのがコンテストの良さかなぁ。
- 山田
- でも、パズルの商売としては、大変じゃないですか?
- 岩原
- 作るのはね(笑)。でも……
- 山田
- でも?
- 岩原
- いつもやっていることというか、作っている間は、全部が自分の実入りになるんで。
- 山田
- そうか。
- 岩原
- まぁ、それが職人になることとパズルで食べることの違いなのかな。
デザインだけする場合は収入が売上の数パーセント。でも、職人の場合、作っている時間は大変なんだけど、全体が稼ぎになるので、感覚は違うでしょうね。 - 山田
- なるほど。
- 岩原
- デザインだけの提供というと、数を売らないとダメなんでしょうけど、作るという労働はなくても収入になるという。そこが違いですね。
- 山田
- どこでお金を生み出すか、ですよね。
- 岩原
- そう。木工職人でパズルなり、からくりを作って大金持ち、というのは私もなってないんで(笑)、やっぱり難しいですよね。
- 一同
- (笑)
- 岩原
- 自分で全部つくって、というのは、なかなか簡単なことじゃないですよ。食べていくだけが目標になりそう。
- 山田
- でも、自分の心の楽しみは満たせている、というぐらいの。
- 岩原
- まぁ、そうなりますかね。作りたいものを作る、ということには近づけますよ。
- 山田
- そこらへんは、職人さんなのかもしれないな。
- 岩原
- シビアですからね。一ヶ月で作るのか、二ヶ月で作るのか、全然ちがいますから。
- 山田
- 儲け半分と言うか、ね。
- 岩原
- まぁ、旧作で、もう一回作っても売れるものがあれば、その作り方は確立しているわけで。
- 山田
- そういうものは少ないんですか?
- 岩原
- いや、そんなこともないですよ。
人気があって、もう一回作って売れると思えば、そこに開発費はかからないわけで、一般的には早くできる。ただ、新作は新作で待ってる人がいるから売れるけれども…… - 山田
- 創作しなきゃいけない。
- 岩原
- ええ。開発がサッとできればいいんだけど、時間がかかって何回もやり直ししていると、どっちがいいんだろう?という。
- 山田
- たとえばペースで言うと、一年で十個作ろうとか、自分の中にはある?
- 岩原
- そんなにはいかないですね。
- えぢ
- なんか目標を決めてるんですか。
- 岩原
- いや、私は目の前のことに追われているんで(笑)。
- えぢ
- (笑)
- 山田
- 結局はそうなるんだ。
- 岩原
- 年間のサイクルは、グループ活動があって、ファンクラブむけの作品があって、それから新作を年一回は作って。
- 山田
- いわゆる、ノルマか(笑)。
- 岩原
- まぁ、言ってしまえば、そういうことで(笑)、大きい展示会があったら、そこには新作を出したいとか、アイデアコンテストの企画をやっていると、その中で作る担当もあって。
- 山田
- なるほど。
- 岩原
- というので、いくつか埋まっていって、ときどき大きい仕事を受けると、もう一年埋まっちゃってたりしますね。
- えぢ
- いつも忙しい印象はあるなぁ。
- 岩原
- とにかく作って形にしないと、誰もやってくれないので。
- えぢ
- でも「からくり企画」という会社を作って、ちゃんと組織になってて、イベントもある程度決まってて、企業体としてうまくやってるなと思うな。
- 山田
- 10年くらいですか?
- 岩原
- えぇと……。とにかく、研究会ができてからは15年ですね。
- ※ からくり創作研究会は1999年、からくり企画は2005年の設立です。
- 山田
- そこまで我慢することが必要なのかもしれない。我慢と言うと、変な言い方ですけども。
- 岩原
- もっと昔、箱根の木工職人によっては、自分の作品を作ることがやりづらかったというか、木工所に入れば会社の製品を作るのが当たり前。とにかく、仕事を早く覚えて、手を動かすことが求められる。親方によっては、自分の作品を作りたいなんて言ったら……
- 山田
- しばかれる(笑)。
- 岩原
- まぁ(笑)、会社の利益にはならないという解釈ですね。
- 山田
- 寝る間も惜しんで、頑張って作って、発表すると。
- 岩原
- いえ、それは独立しないとできない。で、独立するなんて言うと。
- 山田
- なに言ってんねん、と(笑)。
- 岩原
- 自分で工場(こうば)を全部そろえると、かなりかかりますからね。
ま、うちの場合は、ちょっと特殊。ほとんどの人が、最初から新作を作らないといけないって言われるんです。それで良いデザインができないと、また自分で苦しむ。 - 山田
- 大変だ(笑)。
- 岩原
- 一つの職人の生き残り方ですよ。本当の職人だって、作家みたいなことというか、デザインもするわけですし。
2014.4.30
(つづく)