今回は、グラフィックデザイナーであり、造形作家でもあるわたなべちなつさんの『かがみのえほん』シリーズをご紹介します。前回まで穴あき絵本を三回連続で紹介しましたが、今回はその名の通り、鏡を使った絵本です。
最初はこちら、『きょうのおやつは』です。
こちらの絵本は縦開き。本の帯に「かがみのしかけでうつして楽しむ」と書かれているとおり、本を開くと上のページの背景は鏡面になっており、下のページには絵が描かれています。
絵本を90度に開くと、下のページの絵が鏡にうつりこみ、鏡面に描かれた絵と合わせて、奥行きのある一つの絵が出来上がります。鏡にうつすことで二次元の絵本が三次元の景色を生み出す不思議さは、実際に手に取って見ていただくのが一番です。
ボールに卵を割って、小麦粉、牛乳……それらを混ぜて、フライパンでジュージュー。誰もが知っている、おいしいおやつの出来上がり。うまく自分の手を添えると、まるで自分が実際に作っているような感覚を楽しむこともできます。
同じシリーズでもう1冊。『ふしぎなにじ』です。
こちらは『きょうのおやつは』より少し抽象的でしょうか。横開きの絵本で、左右ともに鏡面のページがあります。色々な形をした七色の虹と黒ベタが両面の鏡に写ることで、立体的な形を様々に描き出します。簡単なストーリーも添えられていますが、個々のページを眺めるだけでも楽しめます。
著者のわたなべさんは「しかけの視覚伝達デザイン」をテーマに、愛知県立芸術大学の大学院で研究されたそうです。その在籍中に、この絵本を発表されたとのこと。
ご本人のウェブサイトには、絵本以外にも鏡を用いた楽しそうな作品がいっぱい。今回ご紹介した絵本の世界を巨大化した「BIG MIRROR BOOK」という作品もあるようで、機会があれば体感してみたいです。今後も、絵本の世界にとどまることなく、どのような「しかけ」を創造されるのかが楽しみな作家さんです。
今回はここまで。次回はまた、違う視点からお届けします。