今回は、おふろで遊べる絵本をご紹介。といっても、防水加工の施してある絵本や、スポンジなどの素材を利用して、ぬれても大丈夫な素材で作ってある絵本など、いろいろありますが……今回ご紹介するのは、温度が変わると色が変わる感温インクを利用したもので、おふろに入れると絵が変わる! そんな、ふしぎ絵本です。
こちらは、うたがわさちこさんの絵による『だあれ?』。
お湯につけたときの変化をパッケージ裏面(右)で見ることができます。
詩人・金子みすゞの本でも有名なJULA出版局が、1986年に「おふろであそぶ」シリーズの初回として発売したものです。このシリーズに共通するのは、描かれた絵の黒い部分をお湯につけると透明になり、隠れた絵が表れるということ。この基本的な仕掛けは、すでにこの第一作の段階で確立されていました。
8ページと短く、ストーリーは無いのですが、わたしはネコに、おとうさんはしろくまに、おかあさんはひつじに、思いもよらない変化が楽しめます。表紙にいたっては絵の変化だけでなく、「だあれ?」は「あれ?」に、「わたし」は「ねこ」に、文字も変化します。
お湯につけてインクが消えるという変化を楽しみ、さらにその変化に驚きがあるという意味で、『だあれ?』は感温インクの仕掛けを十分活用した絵本になっていると思います。
JULA出版局「おふろであそぶ」シリーズの一部
その後は『いないいないばあ?』、『かげあそび』、『いくつ?』、『おかあさんはどこ?』、『ゆかいなマント』、『のりたいな』、『これなーんだ?』と、立て続けに様々な作家さんの絵による「おふろであそぶ」シリーズが出版されました。そのうちのいくつかは現在でも販売が続いています。
さらに、ほぼ同時期の1988〜90年にかけて、ミッフィーで知られるディック・ブルーナの「おふろえほん」シリーズをはじめとして、ムーミン、にこにこぷん、こんなこいるかな(NHK「おかあさんといっしょ」より)、ディズニーなど、たくさんの「おふろえほん」シリーズが出版されました。
最近は、三起商行(ミキハウス)やベネッセコーポレーションから、幼児向け雑誌の付録になっているほか、感温インクそのものを開発しているパイロットインキからも、いくつか同様の絵本が発売されているようです。
しかし、残念なことに、ただ黒い色が消えて何かが現れるというだけで、絵の変化には驚きの少ないものがほとんど。感温インクは様々な色の変化をするものが開発されているので、それを活かしながら絵の仕掛けにも工夫した、あっと驚く「おふろであそぶ」絵本の登場に期待したいところです。
今回はここまで。次回はまた、違う視点からお届けします。
- 『おふろであそぶ だあれ?』
- 絵 うたがわさちこ
- 出版 JULA出版局
- 発行 1986年8月
※ そのほかの「おふろであそぶ」リーズ絵本(以下、すべてJULA出版局)
- 『いないいないばあ?』 絵 なとりみちほ (1986年8月)
- 『かげあそび』 絵 かとうまどか (1987年8月)
- 『いくつ?』 絵 うたがわさちこ (1987年8月)
- 『おかあさんはどこ?』 絵 なとりみちほ (1987年4月)
- 『ゆかいなマント』 絵 いそけんじ (1987年4月)
- 『のりたいな』 絵 わかやまけん (1988年4月)
- 『これなーんだ?』 絵 なとりみちほ (1988年4月)