今年も、のんびりペースで楽しい絵本を紹介していきます。
今回は絵や文の仕掛けから離れて、本そのもので遊べる絵本を紹介します。最初は、フランスで出版され、谷川俊太郎さんが訳した『おおかみだぁ!』です。
原書となったのは、2013年にフランスのL'école des loisirs社が刊行した『Au secours, voilà le loup!』という絵本。作者はセドリック・ラマディエさん・ヴァンサン・ブルジョさんのコンビです。
ストーリーはいたってシンプル。オオカミが遠くから、どんどんこちらに向かってくる……というだけ。ただ、読者参加型とでもいうのでしょうか、そのオオカミを追い払うために、読んでいる人は色々な操作をしなければいけません。本をかたむけたり、振ったり、逆さにしたり。
そうして絵本を動かしている間に、どんどんオオカミが迫ってくる。というのが、まるでホラー映画の一端を味わっているかのようです。その感覚を盛り上げるのに、谷川さんの訳も一役かっています。
ちなみに、同じ原作者の「オオカミシリーズ」は『おおかみだぁ!』に続いて二冊あり、2016年1月に『きをつけて おおかみだ!』、同じ年の11月に『ここからだしてくれ~!』が刊行されました。どちらも谷川俊太郎さんが訳を担当していて、一作目と同様の仕掛けを楽しむことができます。
次は、加岳井広(かがくいひろし)さんの『まくらのせんにん そこのあなたの巻』。
黄門様的キャラクター、まくらのせんにんと、かけぶとんのかけさん、しきぶとんのしきさん。旅の途中で出会った、穴に頭がはまって抜けなくなった動物たちを助けようとするお話です。
けれど、助けられないんですね。そこで、本を読んでいる「そこのあなた」に助けてくださいという依頼が「ほんをひっくりかえしてください」。最後はみなさん助かって、めでたしめでたしとなります。
この「まくらのせんにん」シリーズには、前作として『まくらのせんにん さんぽみちの巻』があります。しかし、こちらに同じような仕掛けは施されていません。作者の加岳井さんは2009年に急逝されていて、続編が出ないのも残念です。
最後は、数多くの絵本やアニメーションを手掛ける、のぶみさん作の『しかけのないしかけえほん』。
この本は、親子二人で読むように設定されており、「いわれたことをきちんとしよう」というのがコンセプト。ページに書かれている絵と文に合うよう、絵本全体を使って親子で何かをするという仕掛けになっています。
おにのページには「おにがきた! たべられるぞ にげろー!!」という文章があり、ページ全面に鬼が描かれています。そこで、読み手は何をするかというと、本を見開きで持って、子供の方に鬼を見せて、子供を追いかける。
あかちゃんのページには「だっこだっこして いいこいいこしてあげてね」と書いてあるので、本を見開きで子供に持たせ、本ごと抱えて(だっこして)もらうという具合。とくに、複数のページを使った「わに」の仕掛けは秀逸です。
強いストーリー性はなく、ページごとに遊べるので、適当に開いたページに描かれている動きをするだけで面白いかもしれません。もはや絵本なのか、おもちゃなのか、区別も難しい、この絵本。手に持って走り回れるようなところで読み始めることをお勧めします。
今回はここまで。次回をお楽しみに。
- 『おおかみだあ!』(原題:Au secours, voilà le loup!)
- 文 セドリック・ラマディエ(Cédric Ramadier)
- 絵 ヴァンサン・ブルジョ(Vincent Bourgeau)
- 訳 谷川俊太郎
- 出版 ポプラ社
- 発行 2014年3月
- 『きをつけて おおかみだ!』(原題:Attention petits cochons!)
- 文 セドリック・ラマディエ(Cédric Ramadier)
- 絵 ヴァンサン・ブルジョ(Vincent Bourgeau)
- 訳 谷川俊太郎
- 出版 ポプラ社
- 発行 2016年1月
- 『ここから だしてくれ~!』(原題:Au secours sortez-moi de là!)
- 文 セドリック・ラマディエ(Cédric Ramadier)
- 絵 ヴァンサン・ブルジョ(Vincent Bourgeau)
- 訳 谷川俊太郎
- 出版 ポプラ社
- 発行 2016年11月
- 『まくらのせんにん そこのあなたの巻』
- 作・絵 かがくいひろし
- 出版 佼成出版社
- 発行 2010年1月
- 『しかけのないしかけえほん』
- 作 のぶみ
- 出版 幻冬舎
- 発行 2016年3月