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『用寛さん』

子供が大好きな、迷路。これまでも、たくさんの迷路の絵本が発表されています。今回は、迷路をたどっていくと話が読み進められる、そんな絵本をご紹介します。

最初は、おもちゃ作家でもあり、数々の絵本も手掛けている杉山亮さんと、絵本作家の藤本ともひこさんによる『用寛さん』です。

お話としては、お坊さんの用寛さんが街へ出掛けたり、おばけと戦ったり、様々な冒険を重ねるストーリー。見開きの2ページで一話になっています。

その文章は迷路の中に書かれているため、行きつ戻りつ、文字をたどりながら読み進めていくことになります。この形式の迷路を、杉山亮さんは「おはなしめいろ」と名付け、その後もシリーズとして発表しています。

この「おはなしめいろ」は、迷路の正解の道をたどって、メインストーリーを楽しむのもいいのですが、行き止まりになる文章にも様々なネタが潜んでいて、それらを見つけるのも、また楽しいのです。普通、がっかりしてしまう迷路の行き止まりにも面白いことが隠れていて、わくわくする仕掛けです。

一冊の中には12のお話(迷路)が収録されており、藤本ともひこさんの楽しい絵と合わせて、かなり読み応えのある絵本となっています。

このシリーズは1994年の『用寛さん』に続き、同じ年に『用寛さん旅にでる』、1996年の『用寛さん空をとぶ』という三冊が発売されました。

登場するのは「おはなしめいろ」が中心ですが、その他に、しりとりをしながら進んでいく「しりとり迷路」、小さい数から大きい数にしか進めない「数字の迷路」、同じ絵が描かれている所へワープして進める「ワープ迷路」などなど。一冊に数種類、違うタイプの迷路が入っています。

さらに、同様の仕掛けを入れた「おはなしめいろ せかいのたび」シリーズも刊行され、2002年に『イソップものがたり』と『さんびきのこぶた』、2003年に『ふなのりシンドバッド』と『ヘンゼルとグレーテル』、2004年に『ブレーメンのおんがくたい』と『そんごくう』が発売されました。

これらの本でも、迷路を正しくたどっていけば、みなさんのよく知っている話を読むことができます。ところが、前のシリーズと同様、注目すべきは行き止まりの道に書かれている話。

そこで本来のストーリーから脱線したり、だじゃれが入っていたり、楽しい杉山ワールドが展開されていきます。本によっては見開きで迷路が完結せず、次のページまで迷路が続くものもあり、楽しめる仕掛けがいっぱいです。

この「おはなしめいろ」は絵本の形式だけでなく、「おもちゃ絵ポスター」という一枚絵のポスターや、ポストカードとしても発表されています。また、2008年の絵本『名探偵ホームズの事件簿』や翌年の『ドラキュラ ヘルシング教授のモンスター退治』には、特大ポスターが付いています。

最後に少し脱線。

このように、迷路でストーリーを読み進めるものは、絵本の形式を外れても、ちらほら散見されます。たとえば、1986年の雑誌「パズルハウス」(廣斉堂出版)で、アソビディアの三輪が「第1回パズル大賞」を受賞したのも、この形式。

そのときの作品「パズルマニアは迷路で死ぬ」は、上のような「おはなしめいろ」の仕掛けに加えて、犯人捜しというミステリーの要素も含まれていました(じっくり見てみたい方は、下の画像をクリックしてください!)。

(画像をクリックすると、迷路が表示されます)

今回はここまで。次回をお楽しみに。

今回の絵本
  • 『用寛さん』(用寛さんのおはなしめいろ 1)
  • 作 杉山亮
  • 絵 藤本ともひこ
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 1994年7月

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  • 『用寛さん旅にでる』(用寛さんのおはなしめいろ 2)
  • 作 杉山亮
  • 絵 藤本ともひこ
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 1994年11月

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  • 『用寛さん空をとぶ』(用寛さんのおはなしめいろ 3)
  • 作 杉山亮
  • 絵 藤本ともひこ
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 1996年7月

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  • 『イソップものがたり』(おはなしめいろせかいのたび 1)
  • 作 杉山亮
  • 絵 佐々木マキ
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 2002年7月

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  • 『さんびきのこぶた』(おはなしめいろせかいのたび 2)
  • 作 杉山亮
  • 絵 長新太
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 2002年8月

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  • 『ふなのりシンドバッド』(おはなしめいろせかいのたび 3)
  • 作 杉山亮
  • 絵 なかのひろたか
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 2003年1月

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  • 『ヘンゼルとグレーテル』(おはなしめいろせかいのたび 4)
  • 作 杉山亮
  • 絵 井上洋介
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 2003年6月

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  • 『ブレーメンのおんがくたい』(おはなしめいろせかいのたび 5)
  • 作 杉山亮
  • 絵 長野ヒデ子
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 2004年1月

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  • 『そんごくう』(おはなしめいろせかいのたび 6)
  • 作 杉山亮
  • 絵 和歌山静子
  • 出版 フレーベル館
  • 発行 2004年3月

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  • 『おはなしめいろ1 名探偵ホームズの事件簿』
  • 作 杉山亮
  • 絵 藤本和也
  • 出版 ポプラ社
  • 発行 2008年11月

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  • 『おはなしめいろ2 ドラキュラ ヘルシング教授のモンスター退治』
  • 作 杉山亮
  • 絵 かべやふよう
  • 出版 ポプラ社
  • 発行 2009年8月

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