凧とパズルと判じもん

岩瀬 尚行
学校教諭を経て、2001年に京都でパズル工房「葉樹林」をスタート。立体パズルを創作・販売するかたわら、パズルの楽しさを広める活動を続けている。

鳥居 勝久
滋賀県東近江市にある、世界凧博物館 東近江大凧会館の学芸員。凧に関するイベントの企画・運営に加え、さまざまな展示会の仕掛人としても活躍している。

2 展示に結びつける

鳥居
で、パズルのきっかけは、たまたま朝日新聞だったと思うんですよ。そこに岩瀬さんが紹介されていたんです。
岩瀬
京都新聞じゃなかった?
鳥居
えぇっと……
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それは、二条にお店があったころですか?
岩瀬
二条なら、2008年。
※岩瀬さんの「葉樹林」は嵐山、西陣、二条とお店の場所を変えながら、2012年に同じ京都市内の桂へ移転。
鳥居
あ、新聞の折込みかなぁ。探したら出てくるはずだけど。
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まぁ、いずれにしても、新聞だったと。
鳥居
ええ。そこにパズルの記事が出ていて、パズルと大凧会館を結び付けられないかなと思いました。
────
というと?
鳥居
ここ(東近江)の大凧の絵柄には、頭を使わせるところがあって、「判じもん」という、文字と絵でできた図柄があるんです。
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判じもん。

二匹の龍は辰年の「辰」、その下に「健」の文字。辰を「しん」と読み、これ全体で「心身(しんしん)健やか」という意味。このような図柄は「判じもん」と呼ばれ、さまざまな絵柄が大凧に描かれてきた。

鳥居
まぁ、強引な結びつけかもしれませんが、頭を使うということと、子供も楽しめるのではないかということがあって、新聞を見て、すぐに行きました。
ところが、そこに行っても、それらしきものは一つもありませんでした。
一同
(笑)
鳥居
ええっと、前のお店が二条ですよね?
岩瀬
そうそう、二条。
鳥居
あれ? 前の前だったかな。今の前の、もうひとつ前です。
岩瀬
いやいや、二条は一つ前。その前は西陣やから。
鳥居
あ、西陣だ(笑)。西陣に行ったんです。
一同
(笑)
鳥居
ということは、記事には西陣のお店が載ったんじゃないかな。
岩瀬
あぁー、あの西陣のところはね、けっこう取材があったんやわ。
────
あそこは、町屋づくりの中に、それぞれのお店があったんですよね。
岩瀬
うん。あのときは、うちがどうこうというより、町屋の取り組みとして紹介されて、あちこちの新聞なり、雑誌なりに載せてもらったな。
鳥居
けどね、ずーっと行っても、それらしい店がないんですよ。おかしいな、と思って。
岩瀬
ふふ(笑)。
鳥居
それで、ある店に入って、「すみません、ここでパズルやってはった方、どこ行かれましたかね」と聞いたんです。
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西陣のころは、二階にお店がありましたけど。
鳥居
それがね、そのときにはもうお店がなかったんです。移転後で(笑)。
岩瀬
そうそうそう(笑)。
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なんと、移転後だったんですね。
鳥居
それで、二条と言われたので、もちろん行きました。いろいろ話をして、まぁ、今に至っているわけですよ。
岩瀬
あのとき、「メカニカル130」※で西陣のお店として紹介されて、本が出たころには、すぐ二条に移ったんだった(笑)。
※『The メカニカルパズル130』というムック本のこと。
────
それで鳥居さんは、パズルにも興味を持っていったと。
鳥居
まぁ、いろんな展示会をしてると、どうしてもそれに染まってしまうので、竹のものとか、玩具とか、いろいろ目に留まってしまいますね。
鳥居
パズルにしても、一回やらせてもらったら、すごく好評でした。
いつもアンケートを取っていますが、その中に「またやってほしい」とあったり、次の年には違う展示をやっているのに、そこのアンケートに「いつパズルをやるんですか」とあったりしてね(笑)。
一同
(笑)
鳥居
それと、東近江市内の学校にはチラシを配布していますから、保護者の方も「大凧会館は次に何をするのか」という期待感を持ちつつあるんです。
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それは、いいことですね。
鳥居
それで、「やってほしい」という意見もあったので、二回目のパズル展示もやらせてもらいました。それが三年前。そのときは爆発的な人数になって、大凧会館の夏の展示の中で、そこだけ入場者数が飛び抜けてます。
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記録的でしたか。
鳥居
記録になってます。2000人以上。それだけ入ったことはありませんでした。
岩瀬
(笑)
────
へぇー。
(つづく)