第23回 二通りの見え方を楽しむ、蛇腹折りの広告

山折り、谷折りを交互にくり返す「蛇腹折り」は、角度によって見える面と見えない面ができます。そして、これを利用すれば、一枚の中に二種類の絵柄を入れることができます。

……と文章で説明していくと、なんだか回りくどいですね。百聞一見ということで、まずは、ある広告の写真を見ていただきましょう。

向かって右側から見ると、シンガポールの名所、マーライオン。左側から見ると、マレーシアの名所、ペトロナスツインタワーになります。これは、ポスターが蛇腹折りになっているためですね。

で、この広告のメッセージは「二つの国の名所が短時間の移動で見られます。250馬力の車、ゴルフ」。見る人が動くと絵柄が変わるということを活かした、うまいアプローチだと思います。

次の蛇腹広告(?)も、見え方の変化をうまく商品と結びつけていますよ。

つながっていたソーセージが、きれいにカットされた絵に。すると、その脇に商品である包丁が現れるわけです。この広告を作ったキッチン用品メーカーのTramontina(トラモンティーナ)は、同じ仕掛けの雑誌広告も出していました。

ページが折りたたまれていたら、つい引き伸ばしたくなります。その心理を、うまく利用しています。

さて、蛇腹シリーズの最後に、こんな色っぽいポスターをご紹介しましょう。

Skol(スコール)はブラジルのビール会社。300mlという、小さいサイズを発売した時の告知ポスターです。

蛇腹折りになっている部分に書かれているのは、"Being small has its advantages." 「小さくなるって、好都合だ」と、少しくだけた訳をつけておきましょう。その理由は、次の写真でわかります。

下から眺めたら、ミニスカートが小さくなってTバックになりました。なんともユーモラスな仕掛けですが、これを鑑賞している男の姿はちょっと格好悪いような……。まあ、それも承知の上の「お遊び」の広告なのでしょうね。

二つの絵柄をおもしろく関連付ける、蛇腹広告。作るのは大変でしょうが、トリッキーな広告テクニックとして、まだまだいろんな商品や会社に応用できそうだなあと、思います。