実際にはありえない立体を描いたものを「不可能図形」といいます。
「ペンローズの三角形」や「悪魔のフォーク」という図が知られていますが、これを言葉だけで説明するのは、なかなかに難しいものがあります。
一番わかりやすい例えは、画家のM.C.エッシャーが描いた作品群でしょう。
彼の作品には不可能図形が巧みに取り入れられています。みなさんも、代表作といえる「滝」や「上昇と下降」などで、ありえない立体の世界を一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
さて、広告の中にも、この不可能図形を利用したものがいくつかあります。まずは、エッシャーの「滝」をほぼそのまま利用した、この広告。
コピーは、"4Motion. Get to the jobs others can't." (他ではできない仕事をする、4WDシステム)。「できない=不可能」ということを強調するために、この有名な絵を持ってきたわけですね。
ま、当然ながら、今回ご紹介する広告たちは、すべて「不可能」がキーワードになります。次は、運送会社のもの。
"Deliver The Impposible." (不可能を運びます)
運べないものなどありません、と言いたいわけでしょう。ちなみに、この二つのビジュアルは「ペンローズの三角形」と「悪魔のフォーク」の応用になっています。
どんどん行きましょう。次は、ハブラシの広告。
フレームに書かれている文字は、"Reaches Impposible Places." (不可能なところに届く)。どうも、不可能図形を使った広告は、おおげさに聞こえてきます。作り手としては、誇大広告というよりユーモアのつもりなのでしょう。
最後は、「値段がありえない!」ということで、数字を不可能図形にしてみせた、ディスカウントストアの広告。
通貨単位として表示されている「TL」はトルコリラ。広告主のSOKはトルコにあるお店です。
この他にも、不可能図形を使った広告シリーズはまだまだあり、ご紹介しきれません。この原稿を書くために資料をまとめながら、その多さに驚いたほどでした。
不可能図形は、まずビジュアルとして目を引きますし、「他では不可能」というアピールもできる――というわけで、意外と広告に採用されることが多い素材なんですね。機会があれば、不可能広告(?)の第二弾をお届けできると思います。