いよいよ年の瀬。2015年も終わりを迎えます。その前に、ちょっとだけお付き合いください。ということで、今回はこんなテーマでお届けします。
年末年始になると、なぜか時代劇のテレビ放送が増えたりして、そういう意味では12月に合った題材なのかもしれませんね。
さて、最初の登場は、こちらの作品です。作者はigatoxinさん。
© 2015 igatoxin
「牛若丸」は全体を逆さまにしても同じ。「牛」と「丸」の関係がポイントです。この連載に慣れてしまうと、何でも当然のように思いがちですが、それほど自明なことではありません。すっと見過ごしてしまう自然さの中に、絶妙な調整が隠れています。
さらに、人名が続きます。意瞑字査印さんの作品には、こんな人物が!
© 2015 意瞑字査印
「手塚治虫」は意外かもしれませんが、歴史に名を残す人物とも言えるでしょう。こちらもアンビグラムのスタンダード。味わいのある四文字は、ひっくり返しても変わりません。その代わりに、各パーツは互いの立場を変えて全体を成立させています。
次の作品は、ちょっと変りダネ。kawaharさんの作品です。
© 2015 kawahar
「本阿弥光悦」がカーブの上に乗っていて、その線で鏡写しになっています。つまり、この曲線にピッタリ合う筒状の鏡を置いても、文字が変わらないのですね。だまし絵の一種として知られる「鞘(さや)絵」のテイストも含まれています。
ここまで漢字ばかりの作品でしたが、最後はひらがなのみ。
© 2015 まっしー
まっしーさんの「ひらつからいてう」は、これ全体を逆さにしても同じまま。とても自然に読めてしまう文字のあちこちに、微妙な形の工夫が仕込まれています。しなやかさを裏で支える、静かな技巧に感服するばかり。
これで今月は終わります。ご協力くださった作家のみなさん、ありがとうございました。次回は年明け。また月末ちかくにお会いしましょう。