第16回 文字のあいだに、別の文字が潜んでいる広告

当サイトの連載コラムに「今月のアンビグラム」というのがあります。「アンビグラム」とは、逆さでも読めたり、視点を変えると別の見方が可能になる文字のことで、このコラムでも毎月、面白い文字デザインが掲載されていますよね。

さて、このアンビグラムの手法を使った広告というのもあります。今回は、その実例をご紹介しましょう。

パッと見は、太く黒い文字で「bomb」=「爆弾」と読めると思います。ところが、よく見てみると、文字の背景の黄色い部分にも文字が潜んでいます。これを読むと「BLUFF」=「ハッタリ」。文字の中に別の文字をいれるという、アンビグラム・デザインです。

広告主は「Veja」というブラジルのニュース雑誌で、「Get both sides」(表と裏を手に入れろ)というメッセージを、文字デザインで巧みに表現しているわけです。ちなみに、右隅の雑誌の表紙には「NORTH KOREA」の文字が読み取れます。

そして、こういう広告はシリーズにしてこそ効果があるということで、同じようなアンビグラム・デザインが続けて出ています。

パッと見は、黒い文字で「heal」=「治療」ですが、黄色い地の部分を読むと「sin」=「罪悪」。右隅の雑誌のテーマは「幹細胞」でした。

次は、黒い文字で「victory」=「勝利」。地の部分に潜んでいるのは「defeat」=「敗北」。特集記事は「ブッシュ再選」(広告自体は、やや古いものです)。

さて、次はちょっと苦しい(?)デザインなので、クイズっぽく出題してみます。

下の「SUICIDE」=「自殺」と読める文字に潜んでいるものは?
文字が読めたら、雑誌のテーマも推理してみましょう。

読めましたか?
正解は「Right to die」=「死ぬ権利」。特集テーマは「安楽死」でした。

ニュース雑誌なので当たり前ですが、なかなか重いテーマの言葉が取り上げられています。アンビグラムを作ったデザイナーは、これらの文字デザインに結構苦労したのではないかなあ~などと思ってしまいました。