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『ミライのミイラ』

第8回第9回と「しりとり」を、第10回は「回文」を用いた絵本を紹介してきました。今回は、三種類の言葉遊び絵本を一気にご紹介します。

まずは、くすのきしげのりさんが文を、広瀬克也さんが絵を描いた『ミライのミイラ』。

絵本は、ミライのミイラが主人公。ミライのミイラは科学者で、科学技術で何でもできる。サバクをクサバに、スカイツリーはイカスツリーに。瞬間移動装置を用いれば、あっというまにロシアにいって、イワンさんのワインを買い、そのワインを持ってドイツのツドイに参加する……。こんな感じで、ミライのミイラが時空を超えて活躍する楽しいお話です。

お気づきかと思いますが、「ミイラ」は「ミライ」の文字を並べ替えて出来るもの。このように、単語の文字を入れ替えて別の単語にする言葉遊びを「アナグラム」といいます。ちなみに、ASOBIDEA が提供しているasobot シリーズ第四弾「名前シャッフル」でもアナグラムをお楽しみいただけます。

そんなアナグラムを絵本に盛り込んだ意欲作。時空の旅を続けたミライのミイラが、最後には家族と出会う、心温まるストーリー。テンポ良く散りばめられた数々のアナグラムと一緒にお楽しみください。

次は、ダジャレ絵本の元祖、多田ヒロシさんによる絵本『わにがわになる』。時として、オヤジギャグとして冷たい目で見られるダジャレ。しかし子供はダジャレが大好きです。そんなダジャレも「語呂合わせ」と言いかえると、上品な言葉遊びのように聞こえるから不思議なもの。この絵本にはそんな言葉遊びがたくさん含まれています。

タイトルの「わにがわになる」の他、「こうもりのこもり」「からすがこえをからす」「ねこがねころぶ」「おにのおにぎり」「いるかはいるかい」などなど、リズムのよい短文が続きます。それぞれのダジャレに合わせてユーモラスな絵が描かれていますので、その絵を見ながらダジャレを声に出して読むと、小さなお子さんから大人の方まで楽しめます。

最後は、詩を中心に言葉遊びの仕事を手がける林木林さんが文を、内田かずひろさんが絵を描いた『はやくちまちしょうてんがい はやくちはやあるきたいかい』。タイトルどおり、「なまむぎなまごめなまたまご」(生麦生米生卵)、「とうきょうとっきょきょかきょく」(東京特許許可局)に代表される、早口言葉を盛り込んだ絵本です。

商店街の中を、動物たちが早口言葉を言いながら競争します。花屋に寿司屋、八百屋、公園、魚屋、果物屋、おもちゃ屋と早口言葉を口ずさみながら、動物たちが駆け抜けます。花屋では「なのはなの はなたば ななたば たばね はなやの たな なのはな だらけ」「ひまわりのまわりまわる ひだりまわり」、魚屋では「あじいいらしい あじ あたらしいらしい あじ」「なまうに なまだこ なまなまこ」といった感じ。

吹き出しの台詞はもちろん、沿道の動物の応援や、店の品物に添えられた言葉、さらには店の看板まで早口言葉だらけ。絵も細かいところまで描かれており、たくさんの早口言葉とあわせて絵本を満喫することができます。最後に一点だけご注意を。この絵本、読み聞かせようとするとかなり大変です!

四回にわたってご紹介してきた、言葉遊びを用いた絵本は今回で一段落。次回は久しぶりにトリックがある絵を用いた絵本を紹介する予定です。

今回の絵本
  • 『ミライのミイラ』
  • 作 くすのきしげのり
  • 絵 広瀬克也
  • 出版 瑞雲舎
  • 発行 2014年9月

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  • 『わにがわになる』
  • 作 多田ヒロシ
  • 出版 こぐま社
  • 発行 1977年2月

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  • 『はやくちまちしょうてんがい はやくちはやあるきたいかい』
  • 作 林木林
  • 絵 内田かずひろ
  • 出版 偕成社
  • 発行 2013年11月

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